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つみぐさ 令和3年12月号

目次

 1.大阪北部サイクリングマップのご紹介 その2
 2.漢字の義28 女偏
 3.暮らしミニ情報 辞典を友にしたる日々 夏井いつき
 4.プラットホームの話 その12
    国土交通省が駅ホームにおける視覚障害者の安全対策についての報告書を公表

 5.健康道場 48 1月の京都
 6.私の小さな旅 その17 卒業旅行?竹野海岸 国民休暇村と天橋立
 7.編集後記

1.大阪北部サイクリングマップのご紹介 その2
(発行 大阪府まちづくり戦略室、令和2年12月作成)

 大阪北部の2回目をお届けします。初級の1コースと上級1コースです。

@ 【初級レベル】水都・大阪を再発見! 渡船 × 湾岸ぐるっとライド
  橋を繋いで渡船に乗って、大阪のディープスポットを巡る初心者向けコース
 (アドバイザー シルベストサイクル 山崎 敏正 総括店長)
  距離 34.7km
  所要時間 2時間45分
  獲得標高(スタートからゴールまでのあがった高さの総計) 251m

  スタート地点(JR大阪駅)→ 阪神淀川駅、この間、5.4km・20分
  阪神淀川駅 → 舞洲スポーツアイランド、この間、8.7km・35分
  舞洲スポーツアイランド → なにわ食いしんぼ横丁、この間、6.9km・30分
  なにわ食いしんぼ横丁 → なみはや大橋、この間、2.5km・10分
  なみはや大橋 → 千歳橋渡船場(鶴町側)、この間、1.6km・10分
  千歳橋渡船場(鶴町側)→ (渡船)→ 京セラドーム大阪、この間、3.6km・35分(渡船の待ち時間、乗船時間含む)
  京セラドーム大阪 → 大阪中央卸売市場本場、この間、3.1km・10分
  大阪中央卸売市場本場 → JR大阪駅、この間、3.0km・10分

河川から続く水路が街の隅々まで張り巡らされ、多くの船が輸送や交通の手段として行き交っていたかつての「水都・大阪」を現代でも体感することができるツーリングコースがこちら。淀川から大阪湾までまっすぐ出たら、大阪のうまいもんでちょっと一息。大阪の街が一望できるなみはや大橋からの絶景から、今も現役で街の人々に愛されている渡船まで、知る人ぞ知るディープスポットを結んでみよう。走り終えればあなたはもう大阪通!?

舞洲スポーツアイランド
住所 大阪府大阪市此花区北港緑地2
大阪湾に浮かぶ人工島、舞洲。広大な島内にはさまざまなスポーツ施設やレジャー施設が揃い、外周部では大阪湾の潮風や波音を感じながらライドを楽しむことができる。

なにわ食いしんぼ横丁
住所 大阪府大阪市港区海岸通1-1-10 天保山マーケットプレース内
時間 11時〜20時
定休日 不定休
 海遊館に併設する商業施設内にある、昭和の街並みを再現したフードテーマパーク。たこ焼き・イカ焼き・洋食といった大阪の定番グルメの老舗や名店が並ぶので、気軽に立ち寄って「食い倒れの大阪」を楽しもう。

なみはや大橋
 大正区と港区を結ぶ全長約1.6km、高低差45mでゆるやかな曲線を描き、大阪湾を行き来する船や大阪の市街地を一望できるなみはや大橋。強風が吹くので自転車は降りての押し歩きが原則となる。

千歳橋渡船(鶴町側)
住所 大阪府大阪市大正区鶴町4-1-69
 通勤通学からちょっとした買い物まで、多くの住民に利用されている無料の渡船。自転車と一緒に乗り込んでショートトリップを味わおう。大阪の沿岸部にはこの千歳橋を含めて8カ所の渡船が現役で運航している。

A 【上級レベル】
 ヒルクライムからダートまで 上級者向け北大阪ディスカバリーライド
 北大阪の大人気のヒルクライムコースから穴場スポットまで、こんな裏道もアリだ! 
  (アドバイザー キャノンデール・ジャパン 山本 和弘さん)
  距離 60.2km
  所要時間 5時間25分
  獲得標高(スタートからゴールまでのあがった高さの総計) 1291m

  スタート地点(太陽の塔[万博記念公園]大阪モノレール 万博記念公園駅)→ 
  勝尾寺(約350m)、この間、上り、14.6km・90分
  勝尾寺 → 右近の郷(約420m)、この間、下り上り、6.7km・45分
  右近の郷 → EMMA COFFEE(エマコーヒー)、この間、下り、4.9km・20分
  エマコーヒー → 東海自然歩道、この間、上り、4.7km・30分
  東海自然歩道 → 忍頂寺スポーツ公園・竜王山荘、この間、下り、1.6km・10分
  忍頂寺スポーツ公園・竜王山荘 → 安威川ダム資料館、この間、下り、6.5km・35分
 安威川ダム資料館 → 太陽の塔[万博記念公園]大阪モノレール 万博記念公園駅、この間、上り下り、21km・95分
 
  北摂エリアには、「こんな場所が大阪なんや!」とおもうようなハードヒルクライムコースが広がっている。太陽の塔に見送られてからまず上るのは、定番の勝尾寺。しかしここからは案内人のMTBマスターズの全日本チャンプ、山本和弘さんイチオシで、上級者向けグラベル(未舗装路)林道や、現在建設が進んでいる姿を一望できる激坂スポットの安威川ダムと、脚力とスキルに自信がなければ見ることのできない穴場スポットが盛りだくさん!

太陽の塔(万博記念公園)
住所 大阪府吹田市千里万博公園1-1
 スタート&ゴール地点となる万博記念公園。外周部は自転車道もあり、周回練習にも便利だ。北大阪のシンボルとも言える岡本太郎作品の太陽の塔に見送られて出発!

勝尾寺
住所 大阪府箕面市大字粟生間谷2914-1
 北大阪の定番スポットとして有名な勝尾寺は、獲得標高255mで登坂距離は約4kmのゆるやかなヒルクライム。ピークにある「勝尾寺」の石碑の前での記念撮影までがお決まりだ。
 
EMMA COFFEE
住所 大阪府豊能郡豊能町余野172-5
電話 072-739-0789
時間 9時〜18時
休日 第3水曜・木曜
 北大阪エリアを走るサイクリストのコーヒーブレイクとしてお馴染みのエマコーヒー。挽き立てを味わえるスペシャルティコーヒーに、全粒粉のパンで作ったボリューム満点サンドイッチを合わせてどうぞ。

東海自然歩道
 大阪北部に広がる山々はオンロードだけでなく細いダート道も多々延びており、一部は自転車でも走行が可能。こちらの遊歩道も途中からダートとなるため、上級者でもいつもとひと味違ったライドを楽しめるだろう。

安威川ダム資料館
住所 大阪府茨木市大字大門寺
 大阪府の茨木市を南北に流れる安威川。その治水を主な目的とした安威川ダムが令和4年度の供用を目指し現在建造中だ。非日常の光景を目当てに、展望スペースがある資料館まで激坂を上ってみよう。

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2.漢字の義 28 女偏
                         わこさん

1 女偏に至る
 読みは、メイ、オイ、テツ、デチ、チツ、ヂチ
 意味は、兄弟の子
 熟語は、姪児(テツジ) 姪、甥
     姪孫(テッソン)兄弟姉妹の孫
     姪御(メイゴ) 他人の姪を敬っていう語

2 女偏に大臣の臣
 読みは、キ、イ、キョ、コ、ひめ
 意味は、宮廷に仕えている貴婦人
 熟語は、姫人(キジン)めしつかい
     姫氏(キシ)支那古代の周の姓
     姫君(ヒメギミ)身分の高い人の娘の継承
(この姫と言う字は間違いではないのですがこの大辞典では女偏に大臣の臣ではなく古代では中が口になっています。)

3 女の右にヌ下に巾
 読みは、ド、トウ、ヌ、かねいれ
 意味は、金庫、妻子、鳥の尾
 熟語は、帑府(ドフ)くら
     帑金(ドキン)くらに貯えたたから、財産
     帑蔵(ドゾウ)財宝のくら

4 女偏に宛て名のあて
 読みは、エン、オン、ワン、順う、美し
 意味は、したがう、うつくし、すなお、しとやか
 熟語は、婉曲(エンキョク)やわらかにおもむきのあること。やさしくかどたたぬこと
     婉切(エンセツ)しとやか、やさし
     婉美(エンビ) やさしく、うつくし
        
 これらの漢字は講談社の大辞典より引用しました。
  
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3.暮らしミニ情報
   辞典を友にしたる日々  夏井いつき
                         大滝 龍

 ボーナスをもらえぬ身分になっておよそ30年。中学校教諭というありがたい職をたった8年で退き、俳人というやくざな仕事に転職した。以来ボーナスとは縁のない人生を歩いてきた。ボーナスという響きにはうっとりする。うらやましいなと思う。それがない自分にがっかりする。
 忘れもしない、教員になった年の最初のボーナス。貧乏な大学生活からの社会人一年生。当時はまだ給料袋でもらっていたものだから「うわっ、こんなに札が」と、ささやかな紙の厚みに感動したものだった。  
 最初のボーナスをほぼ全部使って、私はほしくてたまらなかった物を買った。それは『日本国語大辞典』全20巻だ!
 大学の頃、卒論のためにお世話になった図書館の本の数々。その中でももっとも頼りにしていたのが、この辞典だった。
 どんな辞典も実におもしろい。読み物ではあるが、『日本国語大辞典』は詳しさがマニアック。 好奇心をくすぐられる。調べたい言葉の横の、全く関係ない言葉に興味を惹かれついつい読み進めてしまうので、卒論は一向に捗らなかった。が新しいことを知る喜びが、我が心に明々(あかあか)とともったような心持になった。
 教員になった年に買った全20巻は、今も現役だ。
 改定された第2版も出ているし、手軽なデジタル版があることも知っている。落としたら足の甲の骨にひびが入りそうなほど重い第1版だが、私にとっては強い絆で結ばれた同志。おいそれと手放すことはできない。

   君たちは 同志木枯らし 楽しまん  いつき

 かつて平成の大合併で我が故郷・内海村の名が無くなってしまう時、当時の村長から、村民の心の拠り所となる本をと依頼され、ポストカードブックを製作した。
 半年に及ぶ取材も終わり原稿も書きあがったものの、気に入る書名が思いつかない。
 こうなったら『日本国語大辞典』を頼ろうと、第1巻「あ」の1ページ目から黙々とめくるという愚行に出る。と、早くも第3巻「う」で、素敵な言葉に出会った。「うみいづ」、漢字で書くと「産出」。新しい物を生み出すという意味だ。うん、これだ!と心が跳ねた。
 毎年訪れる滋賀県長浜の盆(ぼん)梅(ばい)展。樹齢100年を超える梅に名づけを依頼された時も『日本国語大辞典』を手に取った。今度は、第20巻からめくり始めた。と、なんと第19巻369ページに見つけたのが、「百囀(ひゃくてん)(多くの鳥がいろいろな声でさえずること。鳥がにぎやかにさえずること)」という言葉。春の鳥たちが次々に集まってきて、100年をさえずりそうな良き名前ではないか。 
 どちらの場合も、逆からめくってたら・・・と思うとめまいがしそうだが、それもこれも『日本国語大辞典』との、あうんの呼吸に違いないと勝手に信じている。
 拙著『絶滅寸前季語辞典』を書く際にも、私の傍らには常に『日本国語大辞典』第1版があった。広げては調べ、調べては広げ、20巻の海の中で原稿を書いている感覚が爽快だった。
 そう言えば、『絶命寸前季語辞典』にも、ボーナスのことを書いたなと思いだす。「冬のボーナス ― 年末賞与」だが、なんとこの言葉が市民権を得るまでは「越冬資金」と呼ばれていた。言葉の持つイメージというのは、実におもしろい。「冬のボーナスで外国へ」というと贅沢な感じがするが、「越冬資金で外国へ」となれば逃亡めいてくるのがおかしい。言葉の海を泳ぎ、言葉の森を歩く。これが私の喜びなのだなと思う12月だ。(俳人)
(2019年12月12日付)

                              このページの先頭へ

4.プラットホームの話 その12
   国土交通省が駅ホームにおける視覚障害者の
   安全対策についての報告書を公表
                           かず

 昨年10月から国土交通省、鉄道会社、視覚障害者団体、その他の関係者や有識者で議論されていた「新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策について」の中間報告書が公表されたので、今後導入を検討しているもしくはすでに実用実験に入っている安全対策についての部分を抜粋して記したいと思う。

 新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策について 〜中間報告〜

3.視覚障害者の安全対策について
 図表についてはすべて省略。

3-1.転落防止対策
(1)駅係員等による円滑な介助を行う対策
 視覚障害者のホーム転落防止策として非常に有効なのは、駅係員及び周囲の鉄道利用者等による直接の誘導案内、声かけ、見守りである。各鉄道事業者においては、鉄道利用者にも声かけや見守りに協力していただく取り組みである「声かけ・サポート」運動や、「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン(平成30年5月)」の内容についての駅係員への研修等を実施している。一方で、駅係員が他業務などのため視覚障害者がホームを利用していることに気付かなかったり、視覚障害者の中には駅係員及び周囲の鉄道利用者に介助要請しない方もいることから、視覚障害者が単独でホームを利用する場合も多い。このため、視覚障害者の改札通過やホーム上の歩行をAIカメラ等で検知して駅係員に通知したり、視覚障害者がスマホアプリを用いて駅係員及び周囲の鉄道利用者に介助要請をする方法についての検討が行われている。

@ AIカメラを活用して駅係員等による円滑な介助を行う方法
〈概要〉
 改札に設置したカメラの映像から、白杖等をAIで認識し、駅係員に通報して迅速な介助を行う方法である。近鉄大和西大寺駅、相模鉄道二俣川駅、京阪電鉄祇園四条駅、Osaka Metro長居駅において実証実験が実施され、検知精度の向上等が図られている。

〈現状の課題と今後の取組〉
 視覚障害者の改札通過時の誤検知や未検知をなくすために、盲導犬についても検知対象に加えたうえで、AIの学習機能による検知精度の向上を図る必要がある。また、検知した視覚障害者を見失わずに確実に介助する方策として、検知から介助までの時間の短縮、改札口だけでなくホーム上も含めた効果的なカメラの設置位置などを検討する必要がある。

A スマホアプリを活用して駅係員等による円滑な介助を行う方法
〈概要〉
 視覚障害者がスマホアプリで送信した支援要請を、駅係員等が受信し、確実で迅速な介助を行う方法である。令和2年度末に実施した実証実験の結果を検証のうえで、必要な改良等が行われる予定である。

〈現状の課題と今後の取組〉
 確実に支援要請を行うために、アプリ操作の手数(てかず)を減らすなど、視覚障害者が利用しやすいアプリへの改良が必要である。さらに将来的には、ボランティア等による介助支援も想定されているが、その際には、駅係員との役割分担、資格の付与、介助時における事故発生時の責任等についての検討も必要である。なお、アプリの利用が可能な携帯端末を保持していない視覚障害者への対応などの課題もある。

(2)ホーム端に接近している視覚障害者を検知して注意喚起する方法
 ホームからの転落ケースのうち、件数の多いのが、長軸方向(線路と並行の方向)に歩いている時に勘違いして、ホーム端に接近し転落するケースである。このケースによる転落を防ぐために有効と考えられるのは、ホーム端に接近している視覚障害者に、危険であることを知らせる方法である。
〈概要〉
 ホームに設置したカメラの映像から、転落の危険性がある視覚障害者をAIで認識し、音声で注意喚起する方法である。令和3年夏頃より実際のホームでの実証実験が計画されており、転落防止効果や安全性の検証が行われる予定である。

〈現状の課題と今後の取組〉
ホーム縁端部を歩行する人を検知して注意喚起する方法については既に実証実験が行われているが、視覚障害者と健常者の識別や転落危険性の有無の判断までは行われていない。そのため、AIの活用により、列車の在線状況や歩行動線を踏まえて、転落の危険性のある視覚障害者の確実な識別を可能とするような取り組みが必要である。また、注意喚起する際には視覚障害者に対して、指向性の高いスピーカーの活用などにより、具体的で効果的なメッセージが確実に伝わるように発信される必要がある。一方、短軸方向(線路と垂直方向)の歩行時にホーム端に接近し転落するケースについては、長軸方向の歩行時に比べて注意喚起から転落までの時間が短いものと考えられることから、引き続き検討を行う必要がある。

(3)長軸方向の安全な歩行経路を示す適切な方法
 ホーム長軸方向の歩行時に、ホーム端に接近していることに気付かないような状況やホーム端の点状ブロック沿いを歩いていて線路側にそれる状況を避けるためには、長軸方向の安全な歩行経路を示す方策が求められている。検討会では、ホーム中央に歩行動線の道しるべとなるマーカー(例えば、線状ブロック)を設置する案や、内方線付き点状ブロックの内側の領域を活用する案などが示されたほか、その他にも様々な方策を検討すべきとの意見が出された。考えられる方策については、それぞれにメリット・デメリットがあることから、引き続き、安全性、有効性、実現性を検証するため、視覚障害者が参加する実証実験の実施も含めた検討が必要である。

3-2.万が一、転落しても接触事故に至らせない対策
   (転落を検知し速やかに列車を停止する方法)
〈概要〉
 ホームに設置したカメラ映像で転落した鉄道利用者をAIで認識し、接触を防止するために速やかに列車を止める方法である。従来用いられている転落検知マットより安価に導入できる可能性があり、開発・改良が進められている。一部の駅で既に導入されているのは、カメラが転落を検知した場合、これが駅務室に通知され、駅係員が転落を確認した後に列車を停止させる方法であるが、更なる検知精度の向上のため、令和3年度の実証実験の実施に向けた調整が行われている。

〈現状の課題と今後の取組〉
 既に導入されている方法は、転落時の姿勢や気象条件等によってはカメラによる検知ができないこともあることから、AIの学習機能による更なる検知精度の向上を図る必要がある。さらに、将来的には、検知後に自動的に列車を停止させるシステムへの発展により、転落発生から列車停止までに要する時間の短縮を図ることが望ましいが、そのためには誤検知に伴うダイヤ乱れ等を防ぐため更なる検知精度の向上を図る必要がある。

3-3.ホームドア設置工事中の安全対策
 令和2年11月、東京メトロ東陽町駅において発生した視覚障害者の転落死亡事故では、ホームドアの設置工事中で、本体設備は設置されていたが、ドアが開放された状態であった。
 この事故を受け、東京メトロは、当該駅の各改札に視覚障害者を誘導するための警備員を配置するとともに、人感センサーでホーム上の利用者を検知して自動的にホームドア設置工事中である旨を音声案内する装置の設置、弱視者の見間違いを防止するため車両と同系色のホームドアのデザインの一時的な変更(白地の本体部分に水平方向に入っている青いラインのマスキング)、工程の見直しによるホームドアの供用開始時期の当初予定から約3週間の前倒しを行った。東京メトロは今後のホームドア設置工事においても、警備員の増強、音声案内装置の設置の対策を講じることとしている。
 一方、視覚障害者からは、ホームドア設置工事中との案内放送が確実に伝わるよう、音声案内のメッセージは短く繰り返すこと、反響音に留意して聞き取りやすい環境下で放送することなどの指摘があったことから、これらを踏まえてホームドア設置工事中のホームにおける転落事故を防止するための取り組みを進める必要がある。

3-4.スマホを用いて視覚障害者を誘導する方法
〈概要〉
 視覚障害者がスマホの専用アプリを用いて、点状ブロックに貼り付けたQRコード等の情報を読み取り、自らのいる位置を認識した上で、音声案内による誘導に従って線状ブロック上を歩行し目的地に向かう方法である。安全性や操作性等の観点から、ホームドアの設置されていない駅での転落防止対策としての導入はされていないが、ホームドアの設置されている駅の出入口から、改札、ホーム上の乗降口へと続くルートや、駅と区役所等の公共施設との間のルート等における誘導支援システムとして令和3年1月より東京メトロの一部の駅中で導入されている。この他にも、スマホを用いた様々な誘導支援システムの開発が進められている。
注:明治神宮前 〈原宿〉 駅、新木場駅、辰巳駅、北参道駅、西早稲田駅、外苑前駅、東池袋駅、護国寺駅、豊洲駅(令和3年7月現在)

〈現状の課題と今後の取組〉
 ホームドアがない駅での利用については、現時点では、アプリによる案内と利用者の歩行ルートの不一致等により転落に繋がる危険性が排除できないことから、転落防止対策としてホーム上で利用するためには安全性や操作性について十分な検証が必要である。また、他の鉄道利用者から歩きスマホと見受けられないための工夫も必要である。

3-5.視覚障害者の歩行訓練の実施
 ホーム上での白杖による点状ブロックや車両の確認が適切に行われていないことが転落発生の背景の一つであることが明らかになった。また、アンケート結果によると、転落に至った事例では、危うく転落しそうになった事例に比べて、
・白杖を肩幅に振らず時折地面に突きながら歩行
・白杖をシンボル(視覚障害者であることの目印)として持ち、目視により歩行
・白杖を持たずに、目視により歩行
 といった歩き方をしている人の割合が高くなっていた(転落に至った事例:約34%、危うく転落しそうになった事例:約8%)。
 検討会においても、白杖を正しく用いていれば転落事故を防ぐことができるとの意見が多く出ており、歩行訓練において、白杖を常時接地し、肩幅に振る、点状ブロックや車両の存在を確認するなどの白杖の使い方、また点状ブロック・線状ブロック・内方線付き点状ブロックの役割を学ぶことで、転落する危険性を減少させることができると考えられる。
 前述のアンケート調査では、回答者303人のうち、約半数(143人)がホームでの歩行訓練の経験がなく、その主な理由として、64人が「訓練しなくても歩けると思った」、49人が「訓練があることを知らなかった」と回答している。歩行訓練の重要性や、訓練が受けられる場所などの情報について、視覚障害者への更なる周知・啓発が必要と考えられる。
 以上より、次のように関係者が協力して、より多くの視覚障害者に実際のホームや車両を用いた有効性の高い歩行訓練を行っていただくための環境を整備する必要がある。

〈視覚障害者団体等の役割〉
 視覚障害者団体・支援団体においては、歩行訓練の有効性に関する視覚障害者等への理解促進や啓発活動等を実施するとともに、歩行訓練の実施にあたり、助言や協力を行うことで、より多くの視覚障害者が、効果の高い歩行訓練を受講するための環境づくりを行うことが望ましい。

〈鉄道事業者の役割〉
 鉄道事業者においては、歩行訓練を実施する歩行訓練士や視覚障害者団体と連携しながら、他の利用者の利用の妨げにならない範囲で、積極的に訓練の機会・場所を提供することが望ましい。

〈国・歩行訓練士養成機関の役割〉
 歩行訓練士養成機関による令和2年4月の調査によれば、歩行訓練士養成機関を修了した者は全国で960名、うち視覚障害者に対する生活訓練として実際に歩行訓練を行っている歩行訓練士は186名である。都道府県別で見ると歩行訓練士が1人もいない県が5県あるなど、絶対数が不足している状況が見受けられる。こうしたことから、関係省庁や関係機関が連携して、歩行訓練士の更なる養成、全国各地へのバランスのとれた歩行訓練士の配置等に取り組むことも重要である。また、歩行訓練の実施にあたっては、歩行訓練士養成機関による助言等を行うことも必要である。

3-6.鉄道利用者の協力
 視覚障害者のホームからの転落を防止するためには、上記の関係者による取組とあわせて、鉄道利用者による協力も不可欠である。

(1)鉄道利用者の意識向上
 前述のアンケート等では、「ホーム上の混雑により通常よりも白杖を小さく振らざるを得ずホーム端を認識しづらくなる」、「内方線の内側(ホーム中央側)を歩こうにも、乗車待ちの鉄道利用者とぶつかるため、レール側に迂回せざるを得ない」との意見があった。転落を防止するためには、内方線付き点状ブロック上やその近くに立ち止まったり荷物を置かない、視覚障害者に歩行動線を譲るなど、視覚障害者が安心して歩行できる環境整備に向けた、鉄道利用者の意識向上も不可欠である。

(2)鉄道利用者による積極的な介助
 さらに、駅係員のみならず鉄道利用者による積極的な「声かけ」「見守り」等の支援が必要であり、「声かけ・サポート」運動を一層推進させるなどにより、鉄道利用者が積極的に介助を実施するための機運を醸成していくことが重要である。

(3)鉄道利用者への啓発
 上記について、構内放送、車両内のモニター表示、駅のポスター掲示などにより、判りやすいメッセージによる啓発等を積極的に進める必要がある。なお、それらの製作・実施にあたっては、声かけの方法等によって、視覚障害者の混乱を招くことがないよう、視覚障害者団体や有識者等の意見を踏まえる必要がある。国を含めた関係者が連携のうえで、視覚障害者が快適に鉄道を利用することのできる環境整備に向けた鉄道利用者の意識の醸成を図る必要がある。

 以上が今考えられている対策である。特に内方線ブロックに加えてホーム中央付近に視覚障害者が優先して歩行できるための道しるべを設置することを期待している。

(参考) 国土交通省ホームページ https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001412166.pdf

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5.健康道場 48 1月の京都
                         わこさん

 おめでとうさんどす。

 下鴨神社 平安時代のサッカーを観戦する 
 「蹴鞠はじめ」鞠を蹴り上げる蹴鞠。新年初の奉納行事はいかにも雅で平安時代にタイムトリップしたような不思議な気分にもなれます。蹴鞠が中国から日本にやってきたのは1400年前、平安時代の貴族の間で流行し、日本で独自の発展を遂げたスポーツです。
 平安貴族の血気さかんな若者たちは、蹴鞠の練習に明け暮れたといいます。 
 「枕草子」には「蹴鞠は上品ではないが面白い」とコメントされ、蹴鞠をしながら清水の舞台の欄干の上を往復したとの伝説がある藤原成通(ナリミチ)のようなスターも誕生しました。
 蹴鞠はその後、武家、一般大衆にまで広がり、老若男女に親しまれる国民的スポーツになりました。
 明治維新で衰退しましたが、今は蹴鞠保存会の人たちによって継承されています。
 新年初の生のスポーツ観戦、下鴨神社でいかがでしょうか。

 京都ゑびす神社【十日ゑびす大祭】・八坂神社【祇園のえべっさん】
  商売繁盛の願いを福笹に
 えびす様は商売繁盛の神として全国で信仰されていますが、そのお祭りとして京都では、京都ゑびす神社では「十日えびす大祭」と八坂神社境内にある蛭子(えびす)社(しゃ)の「祇園のえべっさん」が知られています。どちらも、前年11月(旧暦10月)に海から帰ってきていたえびす様が海に出るとされる1月10日前後に行われます。この福笹、飲食店にもよく飾られていますが、もともとは京都ゑびす神社が独自に考案した「お礼」の形態が全国に広まったものだとか。
 「節目正しく真直に伸び」「弾力があり折れない」「葉が落ちず常に青々と繁る」から家運隆昌、商売繁盛の象徴になったそうです。京都ゑびす神社では五日間にわたって吉兆笹の授与があり、11日には舞妓さんによる授与も。この福笹に福俵、福箕(フクミ)、福熊手、福鯛、宝船などの縁起物を追加するのも楽しみの一つです。
 一方、スペクタクルとして見逃せないのが祇園の「えべっさん」のえびす船巡行。9日15時から、七福神を乗せたえびす船が、四条通を往復し、福娘たちが福笹を商店へ配り歩きます。八坂神社蛭子社の起源は平安時代。
 大阪の今宮戎神社のえべっさんも、もとはここからお祀りされたものだとか。どちらも由緒ある京都のえびす様。新年にお参りをして、福笹を家に飾り、運気向上を願ってみませんか。

 御香宮神社(ゴコウノミヤ) 【七種神事】
 正月7日の七草粥。この日は五節句のうちの「人日(ジンジツ)の節句」で、無病息災を願ってこれをいただくのは全国的な習慣です。起源は平安時代とされ、江戸時代になって庶民の間で一般化してきたといいます。この七草粥を正月7日の日に振る舞う神社のひとつで伏見にある御香宮神社。伏見といえば名水の出る酒どころですが、御香宮の境内には名水「御香水」が湧き七草粥もこの御香水で炊かれた。ここでしかいただけない特別な七草粥です。氏子の方から提供のあったお米で炊き、七草も氏子の方が栽培されているものとか。
 白いお粥に刻んだ七草がのったシンプルなおかゆを、塩昆布を添えていただくことができます。
 七草とはセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロでこのうちスズナは蕪、スズシロは大根のことです。春一番に出たパワーある新芽の生命力にあやかれるとともに、お正月の御馳走で疲れた胃腸をやさしく癒してくれること、間違いありません。

 東林院 無病息災を願う【小豆粥で初春を祝う会】
 京都では正月七日の七草粥のあと、小正月の15日に邪気払いと無病息災を願って小豆粥の習慣があります。
 この小豆粥を精進料理とともにいただけるのが、通常は非公開の妙心寺の塔頭東林院(タッチュウトウリンイン)。
 東林院はご住職が料理教室をされていることでも知られていますが、この会では、妙心寺ご用達の精進料理の店、しかもミシュラン一つ星を獲得したこともある「阿じろ」の料理が提供されます。
 ほんのり小豆色に染まったお粥とともに、黒豆、大根と油揚げの煮物、昆布を蛇腹に切って揚げた蛇腹昆布、青菜、お漬物などがお膳にのります。食事前に「食事五観文」を読むのは禅寺ならではの心引き締まる体験。また庭の小鳥などに施すための「さば(生飯)」を係の人が「さば器」に集めにきますが、生きとし生けるものが食料を分かち合う教えにはっとする瞬間です。料理はどれも優しいお味。一流の料理を禅寺の作法とともに、あじわう、またとない体験をしてみませんか。
 (この料理はまだ私はいただいていませんが2020年のデータでは3800円だそうです。コロナが終息すれば行ってみたいです。)

 「茶の間」令和2年1月号から引用しました。

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6.私の小さな旅 その17
   卒業旅行?竹野海岸 国民休暇村と天橋立
                        今茨木童子

 京都ライトハウスでの日常生活訓練の1年、国立神戸視力センターでの理療の資格取得の3年間。2007年3月、家族と離れての生活に終止符を打ちました。資格試験にも無事合格できて(と言ってもまだ発表前ではありましたが)、1日1往復しかない特急「浜風」に乗っていつもとは違ったコースで城崎温泉まで、普通に乗り換えて竹野駅へ行きました。大阪駅を出発する特急「浜風」は東海道・山陽本線を走って、姫路まで。そこから播但線、和田山で山陰線に入り城崎温泉から浜坂までです。竹野駅は停車しないので、城崎温泉で下車し、普通電車に乗り換えます。いつも通る福知山線とは違い、特急とは名ばかりでいたって播但線はのんびり走ります。ローカル色豊かなのは私にとっては心地よい。竹野海岸国民休暇村は、この後に何回も行くことになります。到着すると、甘酒の振る舞いがありました。翌朝豊岡まで出て、天橋立に行くため、北近畿タンゴ鉄道に乗りました。天橋立は入り口にある回旋橋が珍しく舟を通すため回旋して通行止めになる情景を見ました(と言っても見えないので、回旋する音を聞いていただけですが)。ここからだと、京都に出て帰ることになります。

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7.編集後記
                        上田 一裕

 今茨木童子さんの「私の小さな旅 その17」は、卒業旅行竹野海岸です。かずさんの「プラットホームの話 その12 国土交通省が駅ホームにおける視覚障害者の安全対策についての報告書を公表」などです。
 どうぞご期待ください。
 りんごが赤くなると医者が青くなるという慣用句がありますが、わりかた的を射ているようです。人間が必要とする多くのビタミンやぺプチンそして、食物繊維が豊富に含まれているからだそうです。
また、ついついツルツルした見かけの良いものをえらびがちですが、ポツポツと凸凹しているものの方が熟していて甘いとのことです。
 来る寅年が、読者の皆様方にとりましてよい素晴らしい年になりますよう願っています。

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